旧三井家下鴨別邸(その2)

   前回の続きであるが、面白いディテールのふたつめは2階から望楼に上がる階段の上り口に設けられた、現代で言うところの水平シャッターである。ただしこの水平シャッター、スラットは木の板で、写真でわかるように、階段に向かって右手に収納されていて、引き出すと90度折れて階段の前面をふさぐという仕組みになっている。
  下のレールにはコマが連結されていて90度曲がりも含めて動きはスムーズである。板(スラット)どうしが大変高い精度でつながっているため、どのようなジョイントになっているのか、当初はわからなかったのだが、板の間を無理して押し広げてみると布状のものが確認された。おそらく、帆布のような強い材質のものを通して緊結しているのではないかと思われる。
   ただ、この水平シャッターは何のためにあるのだろうか。階段室自体はふすまで囲われているのだからふすまを閉じれば階段は見えなくなる。わざわざ二重にする必要はないはずであるが、その場にいた一同首をひねって、答えはわからずじまいであった。
 

それにしてもこの木製水平シャッターは前回の上下雨戸と同様初めて目にするもので、その精度の高さから伺える高度な技術には大変驚かされる。いずれにしても今後の詳細な調査が楽しみになる、大変有意義な一日であった。


  なお、増築された水回り諸室棟には、おそらく本邦初ではないかと思われる木製洋風便器が造りつけとなっているなど、他にも興味深い個所がいくつかあったことを付け加えておく。

(写真は左から、写真1-望楼への階段廻り、写真2-上がり口詳細、写真3-木製水平シャッター詳細)
(2013/01/10)